フランス・パリの検察は2024年(令和6年)8月28日、通信アプリ「テレグラム(Telegram)」の創業者で最高経営責任者のパベル・ドゥロフ(Pavel Durov)容疑者を起訴しました。
逮捕後、4日間の拘束後に保釈されましたが、出国は禁じられています。
パベル・ドゥロフとは?
パベル・ドゥロフは、ロシア生まれの起業家であり、テクノロジー業界で著名な人物です。
彼はソーシャルネットワーク「VKontakte(VK)」とメッセージングアプリ「Telegram」の創設者として知られています。
生い立ちと教育
パベル・ドゥロフは、技術革新とプライバシー保護を重視した企業家として知られています。
- 1984年10月10日: ソビエト連邦のレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)に生まれる。
- 1990年代: 幼少期をイタリアのトリノで過ごす。
- 2006年: サンクトペテルブルク大学の哲学科を優秀な成績で卒業し、同年にソーシャルネットワーキングサイト「VKontakte(VK)」を共同創設。
- 2011年: ロシアの警察との対立が始まり、反対派政治家のページを削除するよう求められるが拒否。
- 2013年: メッセージングアプリ「Telegram」を弟のニコライと共に設立。
- 2014年4月: VKのCEOを辞任。ロシア政府の圧力を受け、ウクライナのユーザーデータを提供することを拒否したため、ロシアを去る。
- 2015年: セントクリストファー・ネイビスの市民権を取得。
- 2017年: 世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズに選出。
- 2018年: ロシアでTelegramが一時的にブロックされるが、2020年に解除。
- 2021年: フランスとアラブ首長国連邦の市民権を取得。
- 2022年: アラブ首長国連邦で最も裕福な人物として認識される。
- 2023年2月: ドバイで最も影響力のある起業家として評価される。
- 2024年8月24日: フランスでTelegramに関連するコンテンツ監視の不備を理由に逮捕。
パベル・ドゥロフの国籍は?
パベル・ドゥロフは4つの国籍を持っています。
以下の国籍を持つようになった背景には、彼のビジネス戦略や個人的な自由の追求が関係しています。
- ロシア: パベル・ドゥロフは1984年にソビエト連邦のレニングラード(現在のロシア・サンクトペテルブルク)で生まれ、ロシア国籍を持っています。
- セントクリストファー・ネイビス: 2014年、ドゥロフはセントクリストファー・ネイビスの市民権を取得しました。これは、ヨーロッパへのビザなし旅行を可能にするための戦略的な動きであり、同国は多くの国へのビザフリーアクセスを提供しています。また、税制面での利点もあり、彼の財務的自由を確保するための一環として取得されました。
- アラブ首長国連邦(UAE): ドゥロフは2017年にドバイに移住し、2021年にUAEの市民権を取得しました。UAEは、特定の条件を満たす投資家や専門家に市民権を与えることがあります。ドゥロフの市民権取得は、彼のビジネス活動やUAEへの貢献が評価された結果と考えられます。
- フランス: 2021年にフランス市民権を取得しました。フランス市民権は「著名な外国人」としての特例措置を通じて取得されたもので、フランスの国際的な影響力に貢献した人物に与えられることがあります。この手続きは通常の市民権取得プロセスとは異なり、フランス政府の特別な承認が必要です。
これらの市民権は、ドゥロフが自由に移動し、ビジネスを展開するための戦略的な選択であり、彼のプライバシーと財務的な自由を守るためのものです。
キャリア
VKontakteの創設
2006年、ドゥロフはソーシャルネットワーク「VKontakte(VK)」を設立しました。
VKontakte(VK)は、ロシア最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であり、ロシアのFacebookとも呼ばれ、特にロシア、ウクライナ、ベラルーシなどの旧ソ連諸国で広く利用されています。
VKは、FacebookやSpotify、YouTubeのような機能を統合したプラットフォームとして、ユーザーに多様な体験を提供しており、特にロシア市場でのデジタルマーケティングにおいて重要な役割を果たしています。
VKは、2021年時点で5億人以上の登録ユーザーを持ち、毎日約9700万人がアクティブに利用しています。特に若年層に人気があり、18歳から24歳の66%がVKを利用しています。
また、サービスはロシア語をはじめ、英語、スペイン語、日本語など約90の言語に対応しており、国際的なユーザーにも利用されています。
VKはロシアで最も人気のあるソーシャルネットワークとなり、彼は「ロシアのマーク・ザッカーバーグ」と称されるようになりました。
Telegramの創設
ドゥロフは2013年にクロスプラットフォームのメッセージングアプリ「Telegram」を立ち上げました。
暗号化メッセージングサービスとして世界中で多くのユーザーを獲得している「Telegram」には次のような特徴があります。
- 無料で広告なし: Telegramは基本的に無料で利用でき、広告も表示されません。
- 高いセキュリティとプライバシー保護: Telegramは、エンドツーエンド暗号化を使用した「シークレットチャット」機能を提供しています。この機能では、メッセージが送信者のデバイスで暗号化され、受信者のデバイスでのみ復号されます。また、メッセージの自動消去機能もあり、プライバシーを重視しています。
- 高速な通信速度: メッセージの送信速度が非常に速く、1秒以内に相手に届くとされています。
- 多機能なメッセージング: テキストチャットだけでなく、画像、動画、音声データの共有、音声通話、ビデオ通話、グループチャット、チャンネル機能など、さまざまなコミュニケーション手段を提供しています。
- 大規模なグループチャット: Telegramは、最大20万人が参加できる「スーパーグループ」をサポートしており、他のメッセージングアプリと比較して大規模なコミュニティの運営が可能です.
これらの特徴により、Telegramはプライバシーを重視するユーザーや大規模なコミュニティを運営するためのプラットフォームとして人気を集めています。
政治的立場と影響
ドゥロフはロシア政府との対立で知られています。彼はVKのユーザーデータをロシアのセキュリティ機関に提供することを拒否し、その結果、ロシアを離れることになりました。その後、彼はセントクリストファー・ネイビス、フランス、アラブ首長国連邦などの市民権を取得し、国際的な活動を続けています。
逮捕の経緯
パベル・ドゥロフの逮捕は、彼が創設したメッセージングアプリ「Telegram」が違法な活動に利用されていることに関連しており、フランス当局による広範な調査の一環として行われました。
具体的には、Telegramが児童ポルノの拡散、薬物取引、マネーロンダリングなどに利用されている疑いがあり、これらの問題に対する対応が不十分であるとされました。
ドゥロフは、フランスのパリにあるル・ブルジェ空港で逮捕されましたが、これはTelegramがフランス当局との協力を拒否したことが一因とされています。彼の逮捕は、デジタル上の言論の自由とプラットフォームの責任に関する国際的な議論を再燃させました。
この逮捕は、Telegramが持つ強力な暗号化機能とそのコンテンツ管理の方法に対する批判を背景にしています。Telegramは、ユーザー間の通信を保護するために高度な暗号化を使用していますが、これは法執行機関による監視を困難にする側面もあります。
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